| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-074 (Poster presentation)

雌雄異株植物ヒメアオキの群落拡大様式の性差‐雌雄の光合成と伏条特性の検討から

*高尾実可子,蒔田明史,松下通也(秋田県大・生物資源)

雌雄異株植物では、雄と雌とで繁殖にかけるコストが異なると言われており、一般に繁殖コストは雌のほうが大きい場合が多い。この繁殖コストの雌雄差が、成長などの個体群動態における雌雄差や性比の偏りをもたらすと考えられている。ヒメアオキは匍匐形態をとる雌雄異株の常緑低木種で、積雪の圧力などにより地面に接地した茎から発根することができ、クローン繁殖によって群落を形成する。本調査地である十和田湖甲岳台ブナ林では、1995年におきたチシマザサの一斉開花・枯死により林床が明るくなった後、ヒメアオキの群落が広がったと考えられる。本研究ではヒメアオキの性判別調査、幹のバイオマス測定、および挿し木実験により伏条特性を雌雄で比較し、群落拡大様式に性差が見られるか検討した。

林内に20 m四方のプロット3つを設置し性判別を行った結果、全てのプロットにおいて性比の偏りが認められ幹数は雌よりも雄のほうが多かった。資源配分における雌雄差を明らかにするため、葉(当年葉・一年葉)・シュート・繁殖器官へのバイオマス配分を測定した。その結果、当年葉では有意差が認められなかったのに対して、一年葉では有意な雌雄差が認められ、雌のほうが雄よりもバイオマスが大きかった。

この結果から、雌のほうが雄よりも葉が多くついていることが示唆され、雌の大きな繁殖のコストを補っていると考えられる。さらに挿し木実験の結果、根の本数・長さに有意な雌雄差が見られ、雄のほうが多く発根し、雌よりも根が長かった。また、挿し木で測定した最大光合成速度は雄のほうが雌よりも有意に大きかった。これらの結果より、雌よりも雄の方が伏条により容易にクローン繁殖できることが示唆され、強い幹性比の偏りをもたらしていると考えられる。


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