| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-077 (Poster presentation)
隣花受粉を防ぐために植物は、蜜量をばらつかせる戦略を進化させている。ポリネーターは蜜量のばらつきを嫌う傾向があり、こうした花序から早く立ち去ることが知られている。
これまでの研究は、花間での蜜量のばらつきにのみ着目していたが、一つの花内で蜜量をばらつかせるという戦略も考えられる。一つの花に複数の距をもつ種があり、一つ一つの距が蜜源である。距間で蜜量がばらついていると、ポリネーターが一つの花内でばらつきを感知し、その花への訪花のみで立ち去るかもしれない。結果として、花間でばらつきがある場合よりも、ポリネーターを早く立ち去らせることができるかもしれない。
本研究では、花内の距間で蜜量がばらついているかどうかを解析した。さらには、花あたりの距の数が違う種間でばらつきの程度に違いがあるのか、同種の雄期・雌期間でばらつきの程度に違いがあるかのかを調べた。調査には、オダマキ・トリカブト・イカリソウの3種を用いた。そして、袋掛けにより訪花を防いだ花の各距ごとの蜜量を測定した。
結果は以下の通りであった。イカリソウ(距の数 4):ばらつき大 オダマキ(距の数5):ばらつき大 雄期ばらつき<雌期ばらつき トリカブト(距の数2):雄期雌期共にばらつき小
トリカブトでばらつきが小さい。これは、距の数が少ないとばらつかせる効果が小さいためであろう。オダマキの雌期のばらつきが大きいのは、隣花受粉を避けるため、ポリネーターを早く立ち去らせる戦略が進化していると考えられる。雄期では、滞在が短すぎると花粉持ち去り数が減ってしまうため、ばらつきを小さくしてある程度滞在時間を長くしていると考えられる。
以上から、花内で蜜量をばらつかせるという戦略があること、そのばらつかせる程度は距の数や雄期と雌期によって異なることがわかった。