| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-082 (Poster presentation)
斜面において樹木の主幹は斜面下方向に傾いている。幹傾斜について、これまで光環境に着目した研究が行われてきたが、それ以外の要因も幹傾斜に影響する。また幹傾斜は種毎に異なるが、どのような種がどのような反応を示すかについて、同じ地域に分布する多くの樹種を対象にした比較研究は行われていない。
我々は、丹沢山地にて、優占的な10種(イロハモミジ、チドリノキ、サワシバ、クマシデ、イヌシデ、アカシデ、フサザクラ、ブナ、イヌブナ、ケヤキ)を対象に、斜面傾斜、方位、土壌深、DBH、樹冠面積と幹傾斜の関係を調べた。
種をランダム効果に入れたGLMMの結果、幹傾斜の説明要因として斜面傾斜のみが選択され、急斜面ほど幹傾斜が増大するとの全体的な傾向が示された。しかし、同じ斜面傾斜であっても幹傾斜は種によって異なり、土壌の薄い場所に分布する種、最大DBHの大きい種は幹傾斜が大きい傾向にあった。(この傾向は系統的に独立であった。)また、生育範囲が広い種(様々な斜面傾斜、方位、土壌深に分布する種)で幹傾斜が大きい傾向があった。
種内の幹傾斜を決める要因は種毎に様々であったが、幹のサイズと斜面傾斜が決定要因として選択されている種が多く、そうした種では、DBHが大きいほど、急斜面ほど幹が傾く傾向にあった。
株内に複数の幹を持つ場合の各幹の傾きは、フサザクラでは株内の相対サイズが大きいほど・チドリノキは小さいほど、イヌブナでは株内他幹とは独立であった。このことは、個体全体での葉群配置戦略における萌芽幹の機能が3種で異なることを意味する。