| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-166 (Poster presentation)
複数の核遺伝子による多足亜門の系統解析
○宮澤秀幸1、蘇智慧1,2
1 阪大・院理、2 JT生命誌研究館
多足亜門は、ムカデ綱、ヤスデ綱、コムカデ綱、エダヒゲムシ綱の4綱からなる。近年の分子系統学の研究により、節足動物門における多足亜門の単系統性や各綱の単系統性についてはおおむね支持されている。しかし、綱間と綱内の目間の系統関係については明確になっていない。本研究では3つの核タンパク質遺伝子 (DPD1、RPB1、RPB2) を用いて、多足亜門の系統解析を行った。これまでに、ムカデ綱から4種、ヤスデ鋼から10種、コムカデ鋼とエダヒゲムシ綱からそれぞれ2種ずつのサンプルを得て、その3遺伝子の塩基配列を決定した。推定されたアミノ酸配列を用いて、最尤法とベイズ法による系統解析の結果、コムカデ鋼が最初に分岐し、エダヒゲムシ綱、ヤスデ鋼とムカデ鋼がクラスターを形成することが判明した。この結果はミトコンドリア遺伝子や他の核遺伝子による解析結果と大きく異なるが、エダヒゲムシ綱、ヤスデ綱とムカデ綱の3綱が単系統群Monomalataをなすとする、Sharov (1966)による仮説と一致する。ムカデ綱内部では、ゲジ目が最初に分岐し、次いでイシムカデ目が分かれ、オオムカデ目とジムカデ目が姉妹群を形成する結果が得られた。また、ヤスデ鋼内部では、唇顎類、前雄類と畸顎類の3分類群の単系統性が強く支持された。これらムカデ鋼とヤスデ綱内部の目間の系統関係については、形態に基づく見解と概ね一致する。