| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-174 (Poster presentation)
カマキリ類では交尾の際に雌が雄を捕食する“性的共食い”が知られている。雌は栄養を得られるため性的共食いはベネフィットとなりうるが、雄は後の交尾機会を失うため、大きなコストを被る。そのため、性的共食いは性的対立を生じさせていると考えられ、雄はそのコストを避けるような対抗進化をしている可能性がある。演者らのチョウセンカマキリを用いたこれまでの研究では、雄が雌による捕食を避ける行動があること、そして性的共食いを伴う交尾では交尾時間が延長することを明らかにした。交尾時間の延長は、終末投資戦略の一部であると考えられる。しかし、それが精子輸送量や受精成功率の増加に影響を与えうるかは、クモ類での検証例はあるが、カマキリ類ではまだわかっていない。
本研究の目的は、性的共食いを伴う交尾時間の延長が終末投資戦略として適応的であるかを明らかにすることである。そこで、チョウセンカマキリを用いて、交尾時間の延長が精子輸送量と受精成功率の増加に影響を与えているかを検証した。その結果、交尾時間の延長に伴い精子輸送量の増加が見られた。しかし、精子輸送量の増大にも関わらず、受精成功率が増加する可能性は低いことが示唆された(精子競争のoffensiveな側面)。次に、交尾時間の延長は雌をライバル雄からガードすることにつながるかを検証した。その結果、交尾中の雌は雄に対して捕食傾向が強く、そのような雌に対する雄のアプローチ確率が減少した。交尾中の雌に対してライバル雄の横取りの可能性は極めて低く、雄が交尾中に雌をガードしている可能性が示唆された(精子競争のdefensiveな側面)。
以上の結果から性的共食いに伴う交尾時間延長は終末投資戦略として、精子競争のoffensiveな側面ではなく、defensiveな側面で適応的であると考えられた。