| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-182 (Poster presentation)

遺伝的基盤が協力の進化動態に与える影響

*伊藤公一,山内淳(京大・生態研セ)

協力行動は、バクテリアから霊長類まで幅広い生物群にみられる現象である。協力の進化については、生物学においても活発に研究されてきたテーマであり、ゲーム理論の枠組みからも血縁や互恵性、ネットワークといった協力の進化にかかわる様々な側面が調べられてきた。そうした側面の一つとして、連続的な協力ゲームがある。これは、戦略が離散的な場合(協力、非協力など)でなく、協力への投資量を連続的に変化させられる場合を考えるもので、その進化は主に適応ダイナミクスを用いて明らかにされつつある。例えば、Doebeli et al. (2004)は、進化の過程で協力レベルに分岐が生じる事で、単一の協力レベルを持つ集団から協力的な個体(協力戦略)と非協力的な個体(裏切戦略)が進化的に生じうることを示している。

適応ダイナミクスでは、協力レベルが突然変異によって微小な変化しかしない事を仮定している。しかし、実際の生物ではより複雑な遺伝子発現の制御機構によって、協力レベルが決定されている場合が考えられる。例えば、協力レベルは量的制御を行う遺伝子だけでなく、協力行動の発現の有無自体を制御する遺伝子によっても決定されているかもしれない。この場合、発現制御に関わる遺伝子に突然変異が起こる事によって、協力レベルが大きく異なる個体が生じることになり、従来の適応ダイナミクスの予測と大きく異なる結果が得られる可能性がある。

本発表では、このような協力レベルを決定する遺伝的基盤が、協力レベルの進化にどのような影響を与えるかについて報告する。


日本生態学会