| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-256 (Poster presentation)

標識再捕獲法と遺伝的手法によるエゾヤチネズミ個体群の移入率の推定:異なる手法から得られる推定値の信頼性の検討

*山田敏也(北大・環境科学院), 齊藤隆(北大・FSC)

動物個体群の移入個体数の推定方法は、標識再捕獲法と遺伝的手法に大別される。どちらも広く用いられている手法であるが、同様の結果を得られるかについては、ほとんど検討されていない。そこで本研究では、これらの方法から得られる推定値の信頼性を検討するために、2012年の6~8月に、北海道・石狩のエゾヤチネズミ個体群を対象に、1週間おきに計5週のサンプリングを行い、これらの方法を用いた移入個体数の推定と比較を行った。標識再捕獲法では、各週の新規捕獲個体から体重を基準に移入個体を判定し、各週の移入個体数を推定した。遺伝的手法として、アサイメントインデックス(AI)を用いた。AIは、任意交配集団の遺伝子プールから、その個体の対立遺伝子の組み合わせが生じる確率を表す。各個体のAIは、4種類の任意交配集団を仮定して算出した。その値を基に移入個体を判定し、各週の移入個体数を推定した。標識再捕獲法による各週の移入個体数は、2週目:オス10頭・メス10頭、3週目:オス12頭・メス10頭、4週目:オス14頭・メス12頭、5週目:オス28頭・メス5頭であった。標識再捕獲法では、捕獲率が100%で、新規捕獲個体を移入個体と出生個体に区別可能な時、その移入数は真の値である。本研究では、捕獲率は高く(約80%)、移入個体と出生個体が区別可能であったことから、標識再捕獲法による移入数は信頼性の高い結果であると言える。AIによる移入個体数は、メスではいずれの仮定でも標識再捕獲法とほぼ同じであったが、オスでは違いが見られた。これは、仮定した任意交配集団に移入個体が混在してしまった場合、本来は移入個体であっても、AIが高くなり、移入個体と判定されない為であると考えられる。


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