| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-257 (Poster presentation)

滝上で平行進化した陸封型ヨシノボリ類と祖先回遊集団の遺伝的分化と遺伝子流動

*山﨑曜(京大院・理),鹿野雄一(九大・工),渡辺勝敏(京大院・理)

沖縄県西表島の滝上にはハゼ科の淡水魚,キバラヨシノボリ(以下,キバラ)が生息する.最近のmtDNAに基づく系統解析から,各滝上のキバラ集団は,近縁で川と海を回遊するクロヨシノボリ(クロ)が,滝の形成よって陸封されることで,独立に生じたと推定されている.我々は陸封に関連する適応がキバラ集団と祖先回遊集団であるクロとの間に強い分岐選択をもたらし,平行的に生態的種分化を引き起こしたと考えた.そこでまず各キバラ集団とクロ集団の間の遺伝的分化と遺伝子流動を調査することにより,それらの生殖隔離の強度や集団構造を調べた.

同所的な生息地を含む6河川9地点からキバラ8集団とクロ3集団,計343個体をサンプリングし,9つのマイクロサテライト領域を解析した.固定指数Fstから,各キバラ集団とクロ集団の間には明瞭な遺伝的分化が存在することが示された.クロでは解析した3集団間で有意な分化が認められない一方,キバラでは集団間で明瞭な遺伝的分化が認められた.またベイズ帰属性分析から,サンプル全体は河川ごとのキバラ集団とクロ全集団の計7グループに分けられ,キバラとクロが同所的に分布する地点においても交雑個体はまったく確認されなかった.これらの結果は,各キバラとクロの間には強固な生殖隔離が発達していることを示唆する.キバラでは滝上で生活史を完結するために卵が大型化しており,卵サイズへの分岐選択が生殖隔離機構の発達に関与した可能性がある.またクロは仔魚期に海を介して分散するため,河川をまたいで単一の遺伝的集団を形成する一方で,キバラは各滝上に隔離されて河川間で移動分散がほぼ無いため,それぞれが遺伝的に独自性の高い集団を形成していると考えられた.


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