| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-258 (Poster presentation)
魚類の中にはアマゴとサツキマスのように河川残留型と遡河回遊型の種内多型をもつ種がおり、このような種は琵琶湖においても確認されており、アユPlecoglossus altivelis altivelisもその1つである。アユは本来、海と河川を行き来する、両側回遊型の生活史を持つが、陸封された個体群もある。琵琶湖のアユもその1つで、大きく2つの集団にわけられ、河川で産卵し、その仔魚が琵琶湖に降河し、幼魚期に川へ遡上し成長する琵琶湖を海の代わりとした生活史をもつオオアユと産卵のときだけ河川を利用し、琵琶湖内で成長するコアユの2型がある。
また、琵琶湖における安定同位体比の研究では、窒素安定同位体比が流入河川より湖内のほうが高いことが知られており、これを測定することで、河川で採集された個体でもそれがそれまで河川で生息していたものか、湖で生息していたものが遡上してきたものかの区別をすることができる。
本研究ではこの安定同位体比の違いを利用して、河川に産卵されたアユ卵の安定同位体比を測定し、その卵の親がオオアユかコアユかを特定することでオオアユ、コアユの次世代への貢献度を明らかにすることを目的とした。
調査は琵琶湖流入河川のうち7河川で2010年の9、10月に行った。採集した卵を分別する基準として、姉川の河口で採集したコアユの卵巣と河川で採集したオオアユの卵巣の安定同位体比を用いた。
結果として、オオアユは再生産には大きな貢献度がないことが確認された。しかし、オオアユの貢献度が比較的高い河川も存在することから、今現在、貢献度の低いオオアユを保護し、その貢献度をあげることで、全体の産卵量の増加も期待でき、琵琶湖のアユを守る上で、今後オオアユの保護も重要になっていくと考えられる。