| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-260 (Poster presentation)
資源発見能力の高さと資源利用における競争力の異なる2種の相互関係を明らかにするため、死体を利用する腐食性昆虫(オオヒラタシデムシ・クロシデムシ)を用いた野外実験を行った。ラットの死体を用いた予備的な観察から、以下の3点が示唆された。 1)オオヒラタシデムシはクロシデムシより早く死体に到着する。 2)オオヒラタシデムシの誘引量が多い死体程クロシデムシが早く死体に誘引される。 3)オオヒラタシデムシの誘引量の多い死体ではクロシデムシが死体を繁殖に利用できない。
予備調査の結果を踏まえ、オオヒラタシデムシの採餌がクロシデムシの死体発見を促進するが、繁殖成功を阻害すると仮説を立て実験を行った。実験ではオオヒラタシデムシの誘引量を4段階に制限した100 gと25 gのラットを使用した。これらのラットをクロシデムシが活動する夜間に経時的に観察し、クロシデムシの誘引されるまでにかかった時間と誘引後の繁殖行動有無、幼虫数を記録した。この結果、オオヒラタシデムシの誘引量を減らした死体では、クロシデムシの死体への到着も遅くなった。また、死体に誘引されたクロシデムシの繁殖確率はオオヒラタシデムシの誘引量、クロシデムシが死体発見までに要した時間、ラットサイズの影響を受けた。クロシデムシは100 gラットでは必ず繁殖を行ったが、25 gのラットでは発見までに時間を要した死体程、オオヒラタシデムシによるクロシデムシの繁殖確率を低下させる効果が大きくなった。クロシデムシの幼虫数をラットのサイズごとに分けて解析した結果、100 gラットではオオヒラタシデムシの誘引量を増やした死体で幼虫数が減少する傾向が見られた。
以上の結果より、オオヒラタシデムシの死体の採餌は、死体の質を変化させクロシデムシの死体発見を促進する一方で、資源量の減少を通してクロシデムシの繁殖を阻害していることが明らかとなった。