| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-261 (Poster presentation)
日本の沿岸・干潟の代表的な巻貝であるホソウミニナ(Batillaria attramentaria = B. cumingi)は、ミトコンドリアDNAの部分塩基配列の解析から、黒潮と対馬暖流に対応して遺伝的に異なる2つのグループから構成されており、各グループもさらに細かく分化していることが示されている(Kojima et al., 2004)。このような地理的な遺伝的差異は、直達発生ために分散能力が低く,過去の環境変動などで集団が容易に隔離されることで生じたと考えられ、他の多くの水棲無脊椎動物がプランクトン幼生期を持ち、海流などによる分散によって分布域拡大や他集団との遺伝的交流が可能であるのとは異なる特徴である。しかしながら,本種では人間の商業活動に伴った他地域への移入も起こっていることから(Miura et al., 2006 ; 大越 2004)、現在の集団の遺伝的構造に人間活動が影響していることも考えられる。
本研究では東京湾および周辺域のホソウミニナ個体群について、ミトコンドリアCOⅠ遺伝子の部分塩基配列およびマイクロサテライト遺伝子座増幅プライマー(マイクロサテライトマーカー)を用いて解析した結果、ミトコンドリア遺伝子とマイクロサテライトで異なる遺伝的構造が示された。