| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-266 (Poster presentation)

ホソヘリカメムシRiptortus pedestrisの配偶者選択における適応的意義

*洲崎雄,香月雅子,宮竹貴久(岡大院・環境・進化生態),岡田泰和(東大院・総合文化・広域システム),岡田賢祐(岡大院・環境・進化生態)

メスの配偶者に対する選好性は、オスの性形質の形成に対する強力な選択圧である。様々な分類群で、メスは、配偶者を選択する際、オスの質の指標として複数の形質を用いていることが報告されている。この形質には、オス間競争に関係するものも含まれる。しかし、メスの複数の形質に対する選好性と適応度との関係を詳細に調べた研究は多くない。繁殖成功度の高いオスと交尾することで、メスは直接的/間接的な利益だけでなく、コストを受けることもある。いずれの場合でも、オスの形質は、自身の交尾成功度が有利になるように選択圧がかかる(前者の場合は魅力形質、後者の場合は固執形質と呼ばれる)。したがって、これらのオスの形質が、メスの選好性と適応度に与える影響を詳細に調べる必要がある。

そこで、本研究では、オスが誇張された後脚を用いてメスを巡る闘争を行うホソヘリカメムシRiptortus pedestrisにおいて、配偶者としてメスが選択するオスの形質と、配偶者選択によってメスがどのような利益やコストを受けているかを調査した。その結果、メスの選好性はオスの闘争能力と負の関係を示し、求愛率と正の関係を示した。また、魅力が高いオスと交尾したメスは、寿命が低下した。一方で、半きょうだい解析から、メスの選好性に遺伝変異が見られた。

したがって、オスの求愛行動は、メスを操作するセクシャルハラスメントとなっているが、子に遺伝的な利益が存在するため、魅力形質としても機能していると考えられる。以上の結果から、本種のメスが配偶者選択によって受ける直接的なコストと、遺伝的な利益について議論する。


日本生態学会