| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-271 (Poster presentation)
被食者にとって捕食回避のために捕食者の存在を知ることは重要であり、同種他個体からの手がかりを利用することは効果的な手段の1つである。捕食者の存在を示す手がかりは1つではなく、複数存在する場合があり、複数の手がかりを利用することでより効果的に捕食回避できる可能性がある。しかし同種他個体からの複数の手がかりを利用して捕食回避をしている例は知られていない。
ツチガエルRana rugosaは捕食者から攻撃を受けた際に、捕食回避効果のある分泌物を出し、その分泌物は特有のにおいを有している。このにおいを嗅いだ他のツチガエルは活動を抑制することが分かっている。また、捕食者から物理的な拘束を受けた場合には、特有の鳴き声(危険音)を出すことがある。
ツチガエルのにおいと鳴き声は捕食者に攻撃された際に生じるため、他のツチガエルにとって、どちらも捕食者の存在を示す手がかりになりえると考えられる。また、それぞれの手がかりは捕食の危険についてツチガエルにとって異なる情報となっている可能性がある。さらに2つの手がかりが両方とも存在するときには、より切迫した危険のような、単独の手がかりとは別の情報をツチガエルに与えている可能性がある。そこで、室内実験により、(1)ツチガエルがにおいと鳴き声という2つの手がかりを利用しているのか、(2)においと鳴き声というそれぞれの手がかりに対するツチガエルの反応は同じものなのか、(3)においと鳴き声という2つの手がかりが両方ある時にはそれぞれが単独であるときと比べてツチガエルの反応はどのようなものかを、検討した。