| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-272 (Poster presentation)

誰にgroomingすべきか?-ニホンザルのオス間提携モデル-

*関澤麻伊沙(総研大・先導科学),大槻久(総研大・先導科学),佐々木顕(総研大・先導科学)

霊長類の毛づくろいには社会的役割があり、毛づくろいを介して相手個体との親和性を高めることができる。この社会的毛づくろいによって得られる利益のうち重要なものは、群れ内の争いの際、親和性の高い個体に援護してもらえる、あるいはその個体と連合して闘うことができるというものである。つまり、群れ内での争いにおいて連合を形成する場合、どの個体と親和性を高めておくかが重要である。では、どの個体にどれくらい毛づくろいをすれば良いのだろうか。

そこで、血縁関係のない個体同士を想定し、毛づくろい量をどのように分配するかについての数理モデルを作成してシミュレーションを行った。各個体は、毛づくろいに一定量の時間を費やすことができ、それを自分以外の個体それぞれへの毛づくろいにどのくらい割り振るかを戦略として持つ。個体間には持っている力により優劣があり、資源を巡る闘争が発生した場合は、力の強い方が勝つとする。今回のモデルでは、二個体間で闘争が行われている際に第三者が参入し、事前により多くの毛づくろいをしてくれた個体に味方するとした。どの3個体が闘争に参加するかはランダムに決まり、勝利した個体は全ての資源量を、引き分けなら両者が資源量を半分ずつ獲得できるとした。シミュレーションでは、ランダムな毛づくろい戦略を初期値とし、闘争後に各個体の獲得資源量が一定量を下回った場合は、その都度毛づくろいの分配量に微小な変更を加える学習アルゴリズムを採用した。発表では、このシミュレーションにより、最終的にどのような毛づくろい戦略の傾向が出現するのかについて議論したい。


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