| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-273 (Poster presentation)

新潟県における積雪がイノシシの行動に与える影響

*清水晶平1, 望月翔太2, 山本麻希1(長岡技術科学大学院・生物1, 新潟大学院・自然科学2)

イノシシ(Sus scrofa)は足が体重と比べて短いため、雪が深いと活動が困難となり、積雪30cm以上の日が70日を超える北陸~東北地方には生息できないと考えられていた(阿部ら, 1972)。しかし、積雪量が4mを超える 新潟県十日町市では、1995年頃からイノシシの生息痕が報告されている(藤ノ木, 2010)。新潟県では1978年にはイノシシの生息は確認されなかったが(環境省, 1980)、2003年に生息が確認され、2005年に8万円だった農業被害が、2010年には4300万円に達している。そこで本研究は、新潟県に生息するイノシシの行動に積雪が与える影響を評価し、今後の分布域拡大における積雪の影響について考察した。

2009年7月から2011年2月までの87の捕獲地点について、林縁、河川、耕作放棄地、竹林、都市部、鳥獣保護区、積雪量などの地形情報をGISアプリケーションを利用して抽出した。2009年と2010年の積雪の傾向は類似していたので、2年の地形情報のデータについて積雪前(9月~11月)と積雪後(12月~2月)に分け、二項分布を仮定した一般化線形モデルを作成した。また、捕獲地点と捕獲されていない地点(ランダムポイント)の地形情報についても同様のモデルを作成し、イノシシの捕獲地点に関係する環境要因について調べた。

積雪の前後で、イノシシの捕獲地点の地形情報に違いは見られないことから、イノシシは積雪量が250cm以上ある場所においても冬期、定着していることが明かになった。一方、捕獲地点は林縁や保護区に近かったことから、狩猟者が捕獲しやすい場所で実施している人為的バイアスがかかっている可能性が示唆された。本結果と過去の積雪量と被害の拡大状況、捕獲効率等の結果から、今後のイノシシの分布拡大に積雪が与える影響について考察を行う。


日本生態学会