| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-274 (Poster presentation)

ハクセンシオマネキ Uca lactea巣穴をめぐる、オス同士の闘争

:*小泉智弘(和歌山大・教),古賀庸憲(和歌山大・教)

資源をめぐる闘争は多くの動物で見られ、一般に体サイズや先住性が勝敗に影響する。シオマネキ類でも巣穴をめぐる闘争で同様の傾向が見られる。昨年度、ハクセンシオマネキUca lacteaのオスの巣穴をめぐる闘争行動を調べたが、データ数の面で不十分だった。そこで、紀ノ川河口干潟において2012年の6月から10月に、オスの巣穴所有者と侵入者の闘争を繁殖期と非繁殖期に分けて観察した。この結果についてロジスティック回帰分析を行なったところ、繁殖期は96例中83件で所有者が勝利し、非繁殖期では46件中45件で所有者が勝利と、どちらの時期でも闘争への影響が有意だった。しかし、体サイズ(甲長)においては、所有者よりも侵入者の方が大きい場合、繁殖期では54件中9件で侵入者が勝利し、非繁殖期では26件中1件で侵入者が勝利と、繁殖期のみ甲長サイズが闘争に有意に影響した。

これは、繁殖期には交尾に必要とする巣穴の価値が上がって侵入者が動機づけされ、侵入者が自分よりも巣穴を奪いやすい小さな個体を狙うことに起因するのではないかと考えられる。一方、非繁殖期には侵入者にとっての巣穴の価値が下がり、闘争のモチベーションが下がることが原因ではないかと考えられる。また、甲長の大きい個体ほど闘争に勝利したことから、甲長の高さが目の高さに比例しており、ハクセンシオマネキは目の高さによって相手サイズを計測していると推測される。今後は、カニの目の高さや個体群密度の変化が闘争行動に及ぼす影響について、調査を行う予定である。


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