| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-275 (Poster presentation)
持続的な群れを作る動物の中には、闘争後に親和行動を行うことで、闘争によって悪化した関係を修復するものがいる。持続的な群れで生活するハンドウイルカも闘争後に親和行動を行うが、その機能は明らかではない。本研究では、闘争後に起こる親和行動(同調遊泳、コンタクトスイミング、ラビング)に、闘争を行った個体間の関係を修復する機能があるのかを明らかにする事を目的とし、須磨海浜水族園のハンドウイルカ5頭が行った闘争と親和行動を解析した。
闘争の当事者(攻撃個体と被攻撃個体)間、攻撃個体と第三者(闘争を行わなかった個体)間、被攻撃個体と第三者間の組み合わせにおいて、闘争後とそれ以外の時で行われた親和行動の回数を比較した。次いで、各組み合わせにおいて、親和行動の有無、闘争の継続時間、闘争中の当事者の立場の交代、当事者がオトナかコドモか、当事者間の親密さを示す指標のうち、どの要因が再闘争の発生に最も影響を与えるかを、一般化線形混合モデルを用いて検討した。
全ての組み合わせで、親和行動の発生回数は闘争後の方がそれ以外の時より多かった。いずれの組み合わせでも、親和行動が行われる事は再闘争の発生に最も強い負の影響を与えていた。
これらの結果から、ハンドウイルカは闘争後に当事者間や当事者と第三者間で親和行動を行う事によって、再闘争発生の可能性を低減している事が示唆された。本種において、このような親和行動は良好な個体間の関係の維持に、重要な役割を担っているものと考えられる。