| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-277 (Poster presentation)

他種のカエルの鳴き声に対するトノサマガエルの反応

*福元修斗(九大・シス生),吉村友里(九大・シス生),粕谷英一(九大・理)

カエルでは同種他個体に情報を伝達する際、音声シグナルが大きな役割を担っている。繁殖期における同種メスの誘引や同種オスとの競争に使われる鳴き声advertisement callは特に注目され、これまで多くの研究がなされてきた。しかし、カエルの鳴き声の研究の多くは同種の鳴き声に対する反応に焦点が当てられており、種間の生殖隔離を除けば、他種の鳴き声に対する反応を調べた研究は無い。

カエルでは同所的に複数種が存在していることが多く、他種の鳴き声を聞く機会も多い。同所的に存在する種とは捕食や競争など様々な種間関係が生じる。関係を持つ種の情報を得ることは利益があるため、他種の鳴き声に反応することが十分考えられる。例えば捕食者の鳴き声を聞くと捕食回避行動をとり、被食者の鳴き声を聞くと捕食行動をとる可能性がある。そこで本研究では、カエルの他種の鳴き声に対する反応が同所的な種の鳴き声を聞いたときと異所的な種の鳴き声を聞いたときで異なるかを検証した。

実験装置にトノサマガエルを入れ、無音状態にした後に他種の鳴き声(シュレーゲルアオガエル・ヌマガエル・ツチガエル・ウシガエル)を再生し聞かせ、その様子をビデオ撮影した(プレイバック実験)。また、鳴き声の代わりにホワイトノイズとサイレントを用いたコントロールも行った。無音状態での活動量と鳴き声を聞いているときの活動量を比較したところ、同所的に存在する種であるシュレーゲルアオガエルとツチガエルの鳴き声を聞いているときは活動量を低下させた。一方、ウシガエルとヌマガエルの鳴き声及びホワイトノイズやサイレントの実験では活動量の低下は見られなかった。したがって、トノサマガエルは同所的に存在する他種の鳴き声に対して活動量を低下させることが示された。


日本生態学会