| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-282 (Poster presentation)
他者に餌をねだる行動(餌乞い)は、主に子が親に給餌を促す文脈で研究され、繁殖期にみられる雌による雄への餌乞いについてはほとんど着目されてこなかった。雌は自分で餌をとることができるにも関わらず、なぜあえて雄に対して餌をねだるのか。この行動は、単に空腹状態を示す子による親への餌乞いとは、全く異なる機能をもつ可能性がある。モズ Lanius bucephalus の雌は巣作り完了後から産卵期にかけて、つがいの雄に頻繁に餌をねだる。雌にとって、産卵前に雄の給餌能力を評価することは、自身の繁殖投資量(産卵数)を適切に調節する上で有利にはたらくだろう。本研究では、モズの雌は産卵前に雄に餌乞いをすることで、雄の将来の育雛能力を査定するという仮説を検証した。産卵前の雌の餌乞いによく給餌した雄ほど、抱卵期には雌に、育雛期には雛に対してよく給餌する傾向がみられた。また、餌乞いによく給餌した雄とつがった雌ほど、より多くの卵を産む傾向がみられた。これらの結果から、モズの雌は産卵前に雄に対して餌乞いをすることにより、その後の雄の給餌能力を査定し、それに応じて産卵数を調節することが示唆された。