| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-294 (Poster presentation)
アフリカゾウは季節の変化などによって離合集散を行う。資源が豊富な雨季では、大集団を形成し移動するが、その際に若齢個体は老齢個体についていく傾向にある。このような老齢個体の魅力は知識に関連していると考えられる。実際、ゾウは資源の場所に関する知識を持つ可能性があるという報告や、知識を蓄積するという報告がある。
本研究では、コンピュータシミュレーションを用いて、老齢個体についていく個体(follower)と、ついていかずに自らの知識のみを利用する個体(non-follower)について、どのような条件でどちらが有利になるかを検討した。モデルでは、複数の”サイト”(餌場)を仮定し、各個体はサイトの場所に関する知識を持つと仮定する。followerは、知識を多く持つ最老齢個体についていくことで、サイトに関する知識を新たに獲得できる。知識を多く持つと、サイトの消失に対応でき、有利である。しかし、followerは他個体と同一のサイトを訪れるため、強い資源競争にさらされる。一方、non-followerはサイトの知識を新たに得ることはできないが、資源を独占することが可能である。
シミュレーションの結果、followerの割合が一定以下の時に、followerの資源獲得量がnon-followerよりも大きくなり、そうでない場合はnon-followerの資源獲得量の方が大きくなった。また、知識の獲得量を確認した結果、followerの方がnon-followerよりも5倍大きかった。本結果から、followerとnon-follower間には負の頻度依存選択が働いており、集団中におけるfollowerの割合が小さい時にのみ、老齢個体について行くことが適応的であることが示唆された。今後はこの結果を用いてゾウの集団サイズの季節変動の要因を調べたい。