| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-296 (Poster presentation)
社会性昆虫のシロアリでは,形態や行動の異なるカースト間で,分業と協働を行うことで社会行動を構築している.カースト分化の過程での外部形態や行動の顕著な変化に関しては研究が蓄積しているが,フェロモンコミュニケーションや防衛物質の分泌に関わる外分泌腺の分化に関しては未解明な部分が多い.外分泌腺の一つである唾液腺は,シロアリの職蟻では,材の消化酵素であるセルラーゼなどの分泌器官だが,兵隊では消化に寄与せず,その機能は不明であった.そこで本研究では,兵隊分化に伴う唾液腺の機能的変化を明らかにするため,オオシロアリ Hodotermopsis sjostedti を材料とし,以下の解析を行った.
まず,職蟻と兵隊の唾液腺を単離し形態を比較したところ,兵隊の唾液腺は職蟻より肥大化していること,更にパラフィン切片による内部構造の観察から,兵隊の唾液腺には分泌物質を蓄積する構造が多く見られた.これらのことから,兵隊の唾液腺では特異的タンパクを発現している可能性が示唆された.そこで,タンパク質二次元電気泳動(2D-PAGE)を用いて唾液腺において兵隊特異的に発現するタンパクの同定を行った.その結果,兵隊の唾液腺特異的に発現するタンパク質が複数存在することが明らかとなった.以上より,兵隊の唾液腺は職蟻とは異なる機能を持つと考えられる.発表ではLC-MS/MSを用いた兵隊特異的タンパクの同定結果から,兵隊の唾液腺の機能について考察したい.