| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-297 (Poster presentation)
捕食-被食の関係は動物・植物においては広く知られている。細菌界においても細菌を食べる細菌は存在し、現在までに少なくとも5門15科から発見されている。しかし捕食に対する逃避行動は知られていない。本研究では細菌界における捕食に対する逃避行動の存在を示すことを目的とした。
我々は、バイオマットと呼ばれる微生物群集内の種間相互作用を研究する中で、糸状性光合成細菌が高濃度のプロテアーゼ存在下で溶菌し、プロテアーゼ生産菌の餌となることを確認した。そこでこの系を用いて逃避行動を検証した。
試験管内に、光合成細菌を軟寒天培地に懸濁して封入し、その上からプロテアーゼを軟寒天培地に添加し重層した。プロテアーゼはBacillus licheniformis 由来のものを使用した。この試験管を55℃・光照射下で培養した。培養後、プロテアーゼ層に近い部分の光合成細菌の細胞密度は減少し、プロテアーゼ層から離れた部分の細胞密度が上昇した。また上層からプロテアーゼを抜いた条件では、この現象は見られなかった。これらの結果から、糸状性光合成細菌はプロテアーゼを感知し、反対方向に移動すると考えられた。
糸状性光合成細菌を顕微鏡下で観察すると直線的な滑走運動を示し、時折進行方向の前後が転換した。この方向転換がプロテアーゼにより影響されると考えられる。
本研究により、ある濃度のプロテアーゼに対する逃避行動が存在することがわかった。プロテアーゼ生産菌及び運動性を持つ細菌は多く知られているため、この現象は細菌界に広範囲に見られるかもしれない。