| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-305 (Poster presentation)

さとやまにおけるニホンミツバチの訪花活動量と採餌ハビタットの季節変動

*藤原 愛弓,西廣 淳,鷲谷いづみ(東大院・農)

比較的良好な里地里山(さとやま)が残されている北上川水系の小河川、久保川流域(岩手県一関市)において、自然再生推進法に則って「久保川イーハトーブ自然再生事業」が民間主導で取り組まれている。この事業では、管理放棄された山林や棚田などを明るい落葉広葉樹林や湿地として再生し、さとやまの生物多様性保全と多様な生態系サービスの再生に寄与することを目標としている。

本研究では、久保川流域で実施されてきた自然再生事業のニホンミツバチ(以下ミツバチ)による生態系サービス向上への寄与の評価に向けて、ミツバチの採餌ハビタットと訪花活動量の季節性を調査した。2011年と2012年に自然再生事業地を中心に多様なランドスケープを通るように設定したルートセンサスにより、ミツバチが訪花する可能性がある開花植物種(文献等から定義)と開花パッチ、植物が生育するハビタットタイプ(「落葉広葉樹林」「スギ植林地」「畦畔・休耕田」「畑地」「道路・河川沿い」に分類)、ミツバチの訪花個体数を調査した。

その結果、調査ルート沿いには訪花可能植物が合計339種確認され、そのうち51種で実際に訪花が確認された。開花パッチ当たりの訪花確認個体数を目的変数とした一般化線形モデル(調査ルート長でオフセット)で分析した結果、月とハビタットの交互作用が有意であり、(P < 0.0001)、採餌に利用するハビタットが季節的に変動していることが示された。

5-6月は草刈り管理が継続されている「畦畔・休耕田」、7-8月は間伐管理が行われた「落葉広葉樹林や林縁」での訪花が多く認められた。スギ植林地では季節を通じて訪花はほとんど確認されなかった。これらの結果は、ミツバチが関与する生態系サービスにとって、異なるランドスケープ要素が複合したさとやまにおいて、植生管理で創出される明るい環境が、採餌場所として重要であることを示唆する。


日本生態学会