| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-306 (Poster presentation)
水田をハビタットとする水生昆虫の減少が問題となっているが、群集構造の解明など、基礎的知見の蓄積も不十分な現状である。本研究は、長野県上伊那地方を事例にし、水田地域における水生昆虫群集と立地環境条件との関係を解明し、これらの具体的な保全策を検討することを目的とした。水生昆虫群集を基盤整備の有無、市街地と中山間地という4つの異なる立地環境や地域単位で比較すると共に、水田とその周辺環境や管理を含めた一筆単位、入水口や排水口などの特異な微環境毎、という大から小の三つの条件スケールにおいて考察をすすめた。
水生昆虫群集調査は、2011年においては5月21日~8月15日に5調査地域で、2012年においては5月27日~8月19日に8調査地域において水田10筆(1筆につき3地点)で水生昆虫の捕獲調査を実施した。調査時期は2年とも、5月後半および6月前半、6月後半、7月前半、7月後半、8月前半で、回数は全6回実施した。また調査面積は、畦から畝の間の幅約0.2mの空間を横2mで一方向に(0.4㎡)掬い取りを実施した。また、立地環境調査として、土地利用や植生、聞き取り等の調査を実施した。
各地域の水管理と地域毎の水生昆虫の個体数変動を比較すると、中干しの実施時期と水生昆虫群集の個体数の減少時期が重複しており、中干しが一時的な水生昆虫群集の個体数の減少に影響していると考えられた。また、各水生昆虫の種特性をみると、生活環を全うするために必要な環境スケールは種毎に異なっており、様々なスケール条件での検討が必要であることが示唆された。本研究においては平地に位置する市街地と、丘陵地や低山地の中山間地における水田の水生昆虫群集では、構成種群が異なっていた。よって、平地と丘陵地などの異なる立地環境条件下で保全対象地を複数設ける必要性が挙げられた。