| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-307 (Poster presentation)

対馬と東濃地域に隔離分布するヒトツバタゴ集団間の遺伝的文化

*加藤大輔(名大・農),渡辺洋一(名大院・生命農),戸丸信弘(名大院・生命農)

ヒトツバタゴ(Chionanthus retusus)はモクセイ科ヒトツバタゴ属の落葉広葉樹であり、中国南部から台湾、韓国、日本にかけて分布している。環境省によるレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されており、東海地方に固有もしくは準固有の植物種群「東海丘陵要素」の構成樹種でもある。また、日本における分布は長崎県の対馬北端と愛知県・岐阜県の東濃地方に限られ、特異な隔離分布をしている。対馬の生育地には1000個体以上が生育しているが、東濃地方には150個体ほどしか残存しておらず、東濃内でも生育地は連続していない。孤立した小集団は大集団に比べて遺伝的多様性が減少していると言われており、遺伝的多様性の程度は種や集団の絶滅に影響を与えていると考えられている。以上のことから、ヒトツバタゴの保全策を検討する上で、集団の遺伝的多様性と遺伝的構造を把握する必要がある。ヒトツバタゴの遺伝的多様性に関する研究はアロザイムを用いたものがあるが、多型性の高い核マイクロサテライト(SSR)を用いればより詳細な遺伝情報を得られる可能性がある。本研究では絶滅危惧種ヒトツバタゴの保全の基礎情報として、東濃集団の分布状況を把握すること、核SSRを用いて遺伝的多様性と遺伝的構造を明らかにすることを目的とした。対馬集団から50個体、東濃集団からは採取可能な143個体の試料を採取し、核SSR7遺伝子座を用いて遺伝子型を決定した。集団遺伝学的解析およびSTRUCTURE解析を行った結果、東濃集団は対馬集団に比べて遺伝的多様性が減少しており、集団間では大きな分化が確認され、東濃内に2つの異なるクラスターが存在する可能性が示唆された。


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