| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-308 (Poster presentation)

DNAバーコーディングを用いた糞分析に基づく、絶滅危惧種アカガシラカラスバトの食物構成とその季節変化の解明

*安藤温子(京大院・農), 鈴木節子(森林総研), 堀越和夫(小笠原自然文化研究所), 鈴木創(小笠原自然文化研究所), 梅原祥子(小笠原自然文化研究所), 村山美穂(京大・野生動物研究センター), 井鷺裕司(京大院・農)

絶滅危惧動物の食性解析は、その生態解明と適切な保全策を講じる上で不可欠である。糞分析は、非侵襲的な食性解析手法として広く用いられてきた。しかし、ハト目のように砂嚢で種子を粉砕する鳥類においては、糞に含まれる組織片から採食植物を同定することが非常に困難である。そこで発表者らは、特定のDNA領域の塩基配列を用いた種同定システムである、DNAバーコーディングに着目した。本研究では、小笠原諸島の固有亜種であり、絶滅危惧種ІA類に指定されているアカガシラカラスバトColumba janthina nitensを対象に、DNAバーコーディングを用いた食性解析を行った。

葉緑体trnL P6loopをバーコード領域に設定し、次世代シーケンサーを用いたアンプリコンシーケンスによって、アカガシラカラスバトの糞に含まれる植物の塩基配列を決定した。得られた塩基配列を、小笠原諸島に生育する種子植物約230種を対象に作成したデータベースと照合し、採食植物の同定を行った。

DNAバーコーディングを用いた糞分析の検出能は、顕微鏡による分析よりも明らかに高いことが示された。特に、組織断片が糞に残りにくく、顕微鏡による同定が困難な植物は、DNAバーコーディングのみで検出される傾向にあった。アカガシラカラスバトは、クスノキ科やアコウザンショウなど特定の在来種を選択的に採食する一方、外来種を高頻度で採食していることが示唆された。また今回の発表では、アカガシラカラスバトの食物構成の季節変化、並びに生息地における結実状況と食物選択の関連についても評価する予定である。


日本生態学会