| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-310 (Poster presentation)

絶滅危惧水生植物ホソバヘラオモダカの繁殖生態

*新鍋宏将, 角野康郎(神戸大院・理)

ホソバヘラオモダカはオモダカ科ヘラオモダカの変種で兵庫県南部にのみ分布する。近年個体数の減少が著しく2012年環境省レッドリストでは絶滅危惧種IA類(CR)とされている。過去の研究例は少なく、その生態や減少要因については分かっていない。本研究では母種であるヘラオモダカとともに繁殖生態について研究を行った。

圃場にてホソバヘラオモダカとヘラオモダカを栽培し、経時的な花茎数、花数及び最終結実集合果数を記録した。花茎数では両者に差はなかったものの、ホソバヘラオモダカは一株当たりの花数が少なく、1花当たりのそう果数も少ないため1株当たりの種子生産数は平均7200粒とヘラオモダカの平均14800粒に比べておおよそ半分となった。ホソバヘラオモダカの種子生産能力がヘラオモダカよりも劣っていることが示唆された。

交配システムを調べるために(1)放置(コントロール)、(2)同花内での人工受粉(自家受粉)、 (3)同個体の別の花との人工授粉(隣家受粉)、(4)他個体の花との人工授粉(他家受粉)、(5)袋掛け、(6)開花前の花を除雄して袋掛けの6条件で1花当たりの結実数を記録した。結果はホソバヘラオモダカは(1)9.8、(2)5.8、(3)6.0、(4)7.1、(5)9.0、(6)0.2、ヘラオモダカは(1)15.0、(2)7.9、(3)7.3、(4)6.2、(5)15.3、(6)1.1となった。どちらも(2)の処理(自家受粉)で結実が見られたことから自家和合性が確認された。(5)の袋掛けを行った処理は(1)のコントロールと並んで高い結実数を示したことから自動自家受粉を行っていることが示唆された。これらから両者ともに生育地では自家受粉が卓越していると考察した。またホソバヘラオモダカとヘラオモダカを人工交雑させた条件(変種間交雑)でも結実が確認された。変種間において生殖隔離はなく、交雑が可能であることが示された。


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