| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-318 (Poster presentation)
湿原は環境変化や温暖化の影響に対して脆弱であるといわれているが、湿原の縮小に関する基礎的知見は十分ではない。実際の湿原の縮小は空間的に不均一に起こっており、局所な縮小の変異の大きさと空間スケール、そして縮小現象の環境依存性を知ることは、湿原の縮小プロセスを考える上で極めて重要である。本研究では縮小程度が異なる場所の環境条件の違いを明らかにし、縮小メカニズムを推測することを目的とした。
調査は、青森県八甲田山系の標高570~1286mにある標高の異なる5つの湿原で行った。湿原の縮小度の環境依存性を明らかにするため、縮小度をもとにプロットを設定し、標高、pH、EC、傾斜、冬期の地温、地下水位について現地調査を行った。縮小の有無と関連して、湿原および周辺の植生の種組成と環境要因の関係を調べるためCCAを行った。また湿原の縮小を引き起こす環境要因を調べるため、湿原縮小の有無を応答変数にしてGLMMを行いモデル選択を行った。
CCAを行った結果、縮小の有無による種組成の違いは見られず説明率も低かった。これは、特定の種の侵入が湿原の縮小を引き起こしているわけではなく、他の要因によって決まっていることを示唆している。標高・傾き・凸凹度・EC・pHを説明変数としたGLMMの結果、傾きと凸凹度を入れたモデルが採用された。この結果から、微地形の違いが縮小を決める大きな要因であることが明らかになった。また凸凹度と雪解け日は強い相関があり、雪解け日は平均水位や過湿期間・生育期間と相関をもっていた。これらの結果から、①局所的な地形の違いが雪解け日のずれを生み、②雪解けが早いところは水位の低下や生育期間の増加が起こり侵入植物の生育に有利な環境条件になり、③徐々に侵入種が定着・成長することで湿原が縮小する、という縮小メカニズムが推測された。