| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-321 (Poster presentation)

外来種オオカワヂシャと在来種カワヂシャの生育環境の比較:河川の水位と水没期間に注目した出現環境の比較

*松原 豊, 酒井聡樹(東北大・院・生命科学)

急速に分布拡大する外来種がどのような環境に侵入するのかということは、今後の侵入予測や、希少在来種への影響などの点で注目されている。また外来種と近縁な在来種は、ニッチが重複しやすいために生育環境を奪われる可能性がある。そのため、在来種との競合関係の把握は重要である。

河川の水辺環境に生育する種の場合、洪水などの撹乱に注目して生育環境を解析する必要がある。しかし、撹乱に注目した種間の生育環境の比較研究は少ない。そこで我々は、河川水辺環境に出現する、外来種オオカワヂシャと在来種カワヂシャの生育環境を比較した。

調査は、オオカワヂシャが比較的最近侵入したとされる関東地方の鬼怒川流域と、より以前に侵入したとされる関西地方の淀川・大和川流域にて行った。河川岸に垂直なライン状コドラートを作成し、コドラート内に1m2のサブコドラートを設け、開花個体数と微環境を計測した。近隣の水位観測所の水位データから、生育期間中の水没期間や水位・水没回数のデータも得た。両地域で種子を採取し、実生を用いた生育実験も行った。

その結果、関東地方のオオカワヂシャは水没回数が多いと出現しにくいが、関西地方では水没回数に関わらず出現することがわかった。関西地方では、カワヂシャよりも長期間水没する場所に出現する傾向を示した。生育実験では、関東地方のオオカワヂシャは水没期間や回数が増加すると成長量が減少するが、関西地方のオオカワヂシャにはそのような傾向が見られなかった。

これらの結果から、オオカワヂシャは、関東地方と関西地方とで生態的に分化している可能性が示唆された。侵入して間もない関東地方では撹乱に十分に耐えることができず、侵略性もやや低いといえる。一方、より古くに侵入した関西地方では撹乱に耐える侵略性を獲得しており、カワヂシャの生育に悪影響を及ぼしていると結論される。


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