| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-323 (Poster presentation)
魚類などは,成長段階によって生息場所を変えているといわれ,様々な成長段階での生息環境を把握することが重要である.ウツセミカジカ(Cottus reinii)は琵琶湖固有種であり,分布上重要種とされているが,その小型個体の生息場所についてはまだ知見は乏しい.そこで,河川に生息するウツセミカジカが各成長段階でどのような物理的環境の生息場所を選択しているのかを明らかにし,本種の生活史全体を支える環境を備えた河川のあり方を究明することを目的とした.
琵琶湖流入河川である和田打川下流部で行った.調査域として,物理的環境が多様な区間(48.5m)を設定し,水深,流速,底質を測った.採取したウツセミカジカは体長,全長を測り,各成長段階の生息場所の選択性を,Ivlevの選択指数により解析した.
ウツセミカジカの小型,中型個体は60㎝/秒以上の流速の速い場所を選択していた.底質については,各成長段階で異なる礫サイズを生息場所として利用していた.地図による河川環境と本種の分布の比較でも,小型個体が,より流速の速い場所を生息場所として選択していることが明らかになった.
また, 2011年9月2日と9月21日に台風による河川環境の変化があったため,その変化の前後で生息場所の比較をした.そして,2011年11月以降に行われた河川の改修により起こった環境の変化と,その変化によってウツセミカジカの生息場所がどのように変化したかについて報告する.