| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-328 (Poster presentation)

世界遺産・知床の冷水性サケ科魚類を脅かす水温上昇の現状 -ダムは水温上昇を加速させるのか-

*竹川有哉(徳島大院工),河口洋一(徳島大院工),谷口義則(名城大理工)

近年、温暖化が魚類群集に及ぼす影響に関する研究は予測から実証に移っている。イギリスでは20年間の実測データから、気温・河川水温の上昇とサケ科魚類幼魚の密度減少が報告された。日本の年平均気温も100年間で約1.15℃上昇しており(気象庁)、冷水性魚類への影響が懸念される。さらに、上流域における森林伐採やダム設置といった人為的改変が、温暖化による水温上昇に拍車をかけると考えられるが、国内の研究例は少ない。

本研究の対象地である知床半島には冷水性魚類のオショロコマが生息している。同地域は世界における同種の分布南限にあたること、砂防・治山ダムが300基以上設置されていることから、温暖化や人為的改変が水温上昇に及ぼす影響を調べる対象モデル系として適している。本研究では、1999-2001年と2006~11年間に知床半島の西岸15河川、東岸26河川を対象に、ロガー式水温計による夏季の水温計測、エレクトリックショッカーによる魚類調査、物理環境調査を行ってきた。

知床半島の西岸河川と東岸河川で8月の平均水温を比較した結果、西岸は東岸と比べて全体的に高かった。これは、8月の日照時間、平均気温が西岸は東岸と比べて高いことが影響していると考えられた。河川ごとに比較すると、西岸ではダム密度の高い川で水温が高く、ダムがない川では水温が低かった。東岸では全体的に水温が低く、ダム密度との関係性は明瞭ではなかった。これらのことから日射による水温度上昇がダムの存在により加速している可能性が示唆された。そこで、水温上昇を引き起こす要因についてより詳細な検討をするため、水温を目的変数に、物理環境データとGISから抽出できる景観データを説明変数とする統計モデルによる解析を行った。その結果についてはポスター発表で報告する。


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