| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-329 (Poster presentation)
虫媒による花粉のやりとりで受精を行う植物にとっては、生育場所に適切な送粉昆虫が訪れることが種子繁殖を行う上で重要である。アサマフウロ(〈i〉Geranium soboliferum〈/i〉 Komar.)は八ヶ岳や浅間山周辺などに限られた分布を示す草原性植物で、環境省版RDBでは絶滅危惧ⅠB類(EN)、長野県版RDBでは準絶滅危惧(NT)に指定されている。遠藤ら(2003)による昆虫排除実験で、本種は虫媒による他家授粉を行っていることが明らかになった。その際、訪花昆虫の90%以上を膜翅目が占めており、特に外来種であるセイヨウミツバチが多くみられたことから、野辺山高原における本種の送粉系が在来種も組み込まれた従来の多様性をもつものであることを確認する必要性が指摘された。本研究は、本種の訪花昆虫相、開花フェノロジー、結実率を調べ、野辺山高原において本種の種子繁殖を支える送粉系について考察することを目的とした。3年間の訪花昆虫調査結果によって、野辺山高原のアサマフウロはハチ目ではハナバチ類(コシブトハナバチ科・コハナバチ科・ムカシハナバチ科・ミツバチ科・ハキリバチ科・ヒメハナバチ科)と、スズメバチ科・ドロバチ科・ジガバチ科・ベッコウバチ科・ヒメバチ科・アリ科、ハエ目ではハナアブ科チョウ目ではセセリチョウ科・シロチョウ科・ジャノメチョウ科、その他カメムシやゾウムシなどで構成される訪花昆虫相をもつことがわかった。特にコシブトハナバチ科とコハナバチ科はほぼすべての調査地点で毎年確認されていたことから、野辺山高原の種の安定した送粉において重要であると考えた。また、結実率は年毎の訪花量の全体の傾向に合わせて増減していたことから、確認された訪花昆虫種群が送粉機能を有していることが示唆された。