| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-331 (Poster presentation)
日本各地でシカの個体数増加によって林床植生の消失・農林業被害などの問題が生じている。このため、対策立案のためのさまざまな調査が行われ、シカの食性についても各地で調査されている。しかしこれまでの食性調査の多くは野外観察に基づいており、正確に種を把握できていない可能性がある。また胃内容物を用いた研究では種同定が困難であり、大きな分類での評価しかできていない。そこで本研究では屋久島に生息するヤクシカを材料とし、胃内容物サンプルについてDNAによる種同定を行うことでヤクシカの餌の種特定を試みた。
調査は屋久島で行い、屋久島猟友会および林野庁の協力を得て31サンプルを回収した。回収したサンプルは冷凍保存をして大学に持ち帰った。CTAB法により胃内容物から直接DNAを抽出し、rbcLとpsbA-trnHの二つのDNA領域をPCRにより増幅した。その後TOPO TA Cloning Kitを用いてクローニングを行い、シーケンサーにかけ配列を得た。得られた配列をNCBIおよび独自に作成いただいた屋久島植物DNAデータベースを用いてBLAST検索し種を同定した。
シカ1個体から得たサンプルでそれぞれのDNA領域で96個の配列を決定した。この配列から98%の塩基相同率で同定できたものはrbcLで12種、trnHで7種であった。このように、胃内容物からDNA配列を決定し餌植物種を同定することができた。しかし、高いBLASTヒットが得られない配列も多数あった。今後は屋久島に生息する餌候補植物の配列情報を増やし同定精度をあげるとともに、より多くのシカ個体について分析を行う。