| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-340 (Poster presentation)
福島第一原発事故によって環境中へ放出された放射性Csがイワナへ蓄積する実態を把握するとともに、エサ資源となる生物の放射性Cs濃度との関係について検討した。調査は福島県大沢川(流域平均空間線量1.0-1.9µSv/h:文科省2012/6/28航空機モニタリング)と群馬県大谷山流域(流域平均空間線量0.2-0.5µSv/h:2012/5/7同)で行った。2012年8月と11月に各流域50mの流路区間において、イワナおよびエサ資源である陸生と水生生物を採取した。捕獲したイワナの胃内容物を採取した。放射性核種はゲルマニウム半導体検出器を用いて分析した。捕獲したイワナは大谷山流域で47尾、大沢川で59尾で、当歳魚(平均体長64.3mm)、満1歳(同97.6mm)、満2歳(同137.8mm)、および3歳以上の個体(同190mm)であった。捕獲個体の24%(25匹)について放射性核種分析を行った。イワナの筋肉の放射性Cs濃度(Cs-134+Cs-137 Bq/kg-dry)は、大谷山流域では1歳で平均570、2歳で平均619.5であった。また大沢川では1歳で平均2390、2歳で平均3674だった。これらの結果から、どちらの流域においてもイワナには放射性Csが蓄積しており、特に2歳以上で高くなる傾向が見られた。胃内容物は夏期、秋期ともにカゲロウやトビケラ等の水生昆虫が多く見られた。夏期にはカマドウマ科やクモ目などの陸生生物、秋期にはワラジムシ目やアカガエル属などの採餌傾向が見られた。岩本ら(2013)からカマドウマやカエルの放射性Csは高いことが報告されていることから、エサ資源の嗜好性と採餌量、年齢による代謝の違いなどがイワナ体内の蓄積量に影響を及ぼすと予想された。今後、体内に摂取した放射性Csの生物学的半減期なども考慮したモデルによる解析も行う。