| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-342 (Poster presentation)

谷戸田に隣接する下部谷壁斜面の昆虫相の特徴と草原管理による影響

*徳永元(明治大・院・農),倉本宣(明治大・農)

谷戸田に隣接する下部谷壁斜面の草原は適湿から過湿への移行帯であり、田への日照確保を目的とした草刈りなどによる影響で植物の多様性が高いことが明らかになっているものの、動物、特に影響を受けやすいと思われる昆虫においては詳しく調査がなされていない。里山の昆虫相の保全と水田に対する害虫対策としての観点から、下部谷壁斜面の昆虫相を明らかにする目的で、横浜市緑区の市民の森にて捕獲調査を行った。今回はカメムシ目とコウチュウ目に絞って検討する。

谷戸田に隣接する下部谷壁斜面草原の特徴を明らかにするために、雑木林内の草原や湿地など合計6つの調査地を選定した。調査地には2m×14mの調査区を2つ設定し、下部谷壁斜面の草原では8月末に草刈りを行う管理区と行わない放置区をそれぞれ設定した。昆虫の捕獲調査はスィーピングとピットフォールトラップの二つの手法で行った。2つの捕獲調査は可能な限り、前日に雨が降っていない晴れの日に、8月から11月まで月に一回の頻度で行った。スィーピング調査は、調査区の横を歩きながら捕獲網を40回、一つの調査地につき合計80回振り、捕獲した昆虫の種と数を記録した。ピットフォールトラップ調査では、内径7.5cm、深さ10cmの塩化ビニル管を一つの調査区に4つ、4m間隔で地面に切り口が地面と同じ高さになるように埋設した。通常は蓋部分を上にし、調査の際には穴の部分を上にして、約72時間放置した。その後、塩化ビニル管に落ちた昆虫の種と数を記録した。環境調査として9月から11月までの各調査地の平均草高と気温、12月に一週間の積算日射量を測定した。

スィーピング調査では全調査区合計でカメムシ目58種2993個体、コウチュウ目30種341個体を捕獲し、ピットフォールトラップ調査ではコウチュウ目22種249個体を捕獲した。

発表では環境との関係も明らかにする予定である。


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