| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-349 (Poster presentation)

伐採木の選定方針が針広混交林のササ密度と樹木更新量を決定づける

*辰巳晋一, 尾張敏章(東大院・農)

択伐施業における伐採は、木材を生産すると同時に、林床の光環境を改善して次世代の樹木の更新を促すことを目標にする。しかし、北海道中央部の針広混交林では、光環境の改善によってササが増加し、かえって更新が阻害されてしまうことも多い。これら「伐採(林分構造)」「ササ密度」「更新量」の三要素は、それぞれ空間的なばらつきが大きく、各要素間の相互作用は時間的な遅れを伴うことも少なくない。そのため、伐採が将来的なササ密度と更新量に与える影響を統一的に予測することはこれまで困難であった。本研究では、一般化状態空間モデルを使って、三要素の状態の空間的・時間的な違い・変化を明示的にモデリングし、推定した。

推定の結果、針葉樹にはササを抑制する効果がある一方、広葉樹にはその効果が認められなかった。また、針葉樹のササ抑制効果は胸高直径が約25cmのときにピークになり、それ以上大きくなると減少した。ササ密度が更新量に与える負の影響は、広葉樹よりも針葉樹に対して大きかった。また、その負の影響は数十年の遅れを伴うと推定された。総じて、針葉樹の小中径木の減少はササを増加させ、そのササの増加がさらに将来的な針葉樹の減少につながるという、正のフィードバックの存在が示唆された。択伐施業における伐採木の選定では、なるべく針葉樹の小中径木の保護に配慮することが、継続的な木材生産と林分構造の維持につながると考えられた。


日本生態学会