| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-355 (Poster presentation)
伝統的な管理が行われている農地景観は,生物多様性が高く,希少種など固有の種も多いことから,保全上の価値が高い。静岡県菊川市の棚田も伝統的な農地管理と多様な生育環境からなり,多様な草本種が生育している。しかし,近年,その一部で要注意外来生物ネズミムギLolium multiflorum Lam.が確認されており,棚田全体への拡散が危惧されている。適切な管理を行うために,ネズミムギの分布状況や侵入を受けている生育環境を把握する必要がある。本研究では,ネズミムギの分布と植生および土壌水分との関係を調査した。
調査は菊川市上倉沢の棚田(10.1ha)で行った。この棚田には復田年次の異なる1999年復田と2011年復田,および休耕田がある。2011年7月,2012年1月~2月に棚田畦畔,休耕田,棚田内の農道および周辺道路端で一定間隔ごとに,コドラート(50×50cm) 内のネズミムギ被度を調べた。2011年11月に植生調査と土壌採取を行った。分布調査の結果,2011年復田畦畔と道路端の一部において高い被度でネズミムギが確認された。GLM分析の結果,ネズミムギ被度と出現草種の種数,最大草高との間に負の相関が認められた。一方,ネズミムギ被度と土壌含水率との間には相関がなかった。これらのことから,ネズミムギは生育期間中に被陰をされにくい環境に定着しやすいことが示唆された。