| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-381 (Poster presentation)

水域の脱窒を支配する環境因子 ―干潟と淡水湖の比較―

*大沢雄一郎,宮内龍大郎,千賀有希子(東邦大・理)

汽水域や淡水域の閉鎖性水域において栄養塩の流入に伴う富栄養化が問題視されている。栄養塩の1つである窒素は、微生物が担う脱窒を経て水域から取り除くことができる。脱窒速度を支配する環境因子が明らかにできれば、閉鎖性水域における富栄養化を制御できると期待される。本研究では、汽水閉鎖性水域として谷津干潟を、淡水閉鎖性水域として霞ヶ浦を対象に脱窒活性と環境因子との関係を統計解析により考察した。また、これまで考慮されてこなかった溶存有機物成分が脱窒に与える影響についても解析を行ったので報告する。

脱窒活性はアセチレン阻害法で測定した。環境因子として、pH、温度、酸化還元電位、塩分(電気伝導度)、溶存酸素、粒度組成、含水率、強熱減量、亜硝酸、硝酸、アンモニア、リン酸、クロロフィルa、溶存有機炭素と腐植物質吸光度を測定した。また、溶存有機物成分を三次元励起蛍光スペクトル法で測定し、PARAFAC解析を行った。脱窒活性と環境因子の回帰分析には統計ソフトRを用いた。

谷津干潟では、脱窒の基質である硝酸、亜硝酸および有機物(強熱減量)と正の相関が得られた。また、溶存有機物成分との解析により、チロシン様およびトリプトファン様物質と良い相関が得られた。これらの有機物は脱窒に大きく関わっていると考えられた。さらに、植物プランクトンのクロロフィルaと正の相関がある地点では、植物プランクトンが微生物分解され生成した有機物成分と良い相関が得られた。この結果は植物プランクトン由来の有機物が脱窒に強く影響する事を示している。一方、霞ヶ浦では脱窒活性と基質との間に相関はなかった。従って、常に基質が高い富栄養化水域では基質の変動は脱窒にほとんど影響しないと推察された。霞ヶ浦の脱窒と溶存有機物成分の解析は検討中である。


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