| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-383 (Poster presentation)

森林土壌の窒素無機化速度に対するpHとC/N比の影響

*山田高大(京都大・農), 藤井一至(森林総研), 舟川晋也(京都大・農)

背景 土壌中のN無機化プロセスは生態系の物質循環において重要である。N無機化においては、高分子化合物の分解(脱重合)とアンモニア化成の2つのプロセスが律速段階となりうる。耕地土壌では一般的に脱重合がN無機化を律速するが、森林土壌におけるN無機化の律速要因は明らかではない。森林土壌のN制限・酸性環境では糸状菌が優占するため脱重合が促進されると考えられ、耕地土壌とは異なりアンモニア化成がN無機化を律速する可能性がある。本研究では、森林土壌のN無機化速度に及ぼすアンモニア化成能の影響を解析し、N無機化の律速要因を解明した。

材料と方法 京都3地点、岩手3地点、タイ1地点の森林7地点の表層土壌(0-10 cm)を用いた。脱重合能とアンモニア化成能を調べるため、カゼイン溶液、アルギニン溶液(140 mg N kg-1 )をそれぞれ土壌に添加し、60%圃場容水量・25℃条件で培養実験を行った。カゼイン添加土壌のK2SO4抽出N量、アルギニン添加土壌のKCl抽出無機態N量の純増加速度をそれぞれ脱重合能、アンモニア化成能の指標とした。

結果と考察 カゼイン添加実験の結果、脱重合能は耕地土壌に比べて森林土壌で高かった。森林土壌間では、京都の強酸性土壌において脱重合能は高かった。アルギニン添加実験の結果、アンモニア化成能は土壌C/N比が高くなるほど低下した。脱重合能とアンモニア化成能を比較すると、C/N比の低い岩手・タイの弱酸性土壌では耕地土壌と同様に脱重合がN無機化を律速することが示された。一方で、京都の強酸性土壌では脱重合能が高く、アンモニア化成能が低かった。特にC/N比が高くアンモニア化成能が低い土壌では脱重合能がアンモニア化成能を上回り、耕地とは異なる特徴を示した。以上より、C/N比の高い酸性森林土壌ではアンモニア化成がN無機化を律速しうることが示された。


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