| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-384 (Poster presentation)
土壌中の微生物、植物根が生産するCO2が地表面に放出される現象を土壌呼吸という。土壌呼吸の制御要因については多くの研究が行われ、地温や土壌含水率との相関が明らかになっている。一方、降雨が与える影響については十分な研究がされていない。乾燥地帯ではBirch Effectという降雨による土壌呼吸速度の上昇が知られているが、湿潤な地域における研究例は不足している。そこで本研究では比較的湿潤な日本の冷温帯落葉広葉樹林において降雨が土壌呼吸に与える影響を明らかにすることを目的とした。
観測は早稲田大学軽井沢試験地の落葉広葉樹林で行った。2011年4月から12月まで毎月5日程度の土壌呼吸速度の連続測定を行い、自然降雨下での土壌呼吸速度の解析を行った。また、8、9月に蓄圧式噴霧器を用いた人工降雨実験を行い、降雨が土壌呼吸に与える影響を観測した。
乾燥時に5 mmの連続降雨があった10月では土壌含水率の若干の上昇に伴い土壌呼吸速度の上昇が確認された。一方、2日おきに12~14 mmの連続降雨があった6月、乾燥時に15 mmの連続降雨があった7月とも、土壌含水率は降雨に伴い大きく上昇したが、土壌呼吸速度への影響は見られなかった。人工降雨実験では10 mmの降雨、20 mmの降雨のどちらも土壌呼吸速度への影響は確認されなかった。連続降雨量の少ない場合には水分条件の改善による土壌微生物活性の上昇の影響により土壌呼吸速度が高くなるが、多い場合にはCO2の流去水への溶解、土壌表面の雨水による被覆に伴うガス拡散の停滞といった負の要因により土壌呼吸速度が変動しなかったものと考えられる。今後、降雨による影響の理解を深めるためには、土壌構造の把握や土壌深度別のCO2濃度分布の連続測定が必要であると考えられる。