| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-385 (Poster presentation)
リョウブは先行研究において、葉にCo、Cd、Ni、Znを高濃度に蓄積していることが明らかとなっている。また、リョウブの葉中Co濃度は、土壌中Co濃度の傾向に依存しないことが示された。これより、重金属蓄積の特性は、生育している土壌の化学特性によって異なることが考えられる。そこで、本研究では生育土壌の土壌pHを変化させることによって、リョウブの重金属蓄積にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。
対象地は、愛知県新城市の竹ノ輪(母岩が蛇紋岩、土壌pH 6.5、Co濃度 36 μg/g)と上吉田(母岩が結晶片岩、土壌pH 4.3 、Co濃度 4.3 μg/g)の異なる2地点の二次林である。2011年6月28日に竹ノ輪からリョウブの苗を土壌ごと採取してポットに入れ、野外で栽培し、pH低下実験(2011年9月から1年間)を行った。pH低下区は、0.01 M 硫酸を理論上、上吉田の土壌pHと同様の値になるよう3.5 L添加した(約50 ml/回)。コントロール区では水道水を与えた。実験終了後、ポットの土壌と植物体を回収し、土壌についてはpH(H2O)と形態別元素濃度(Tessierの連続抽出法)を、植物体については硝酸分解後、元素濃度をICP-AESで測定した。
pH低下区の土壌pHは5.8までしか下がらなかった。土壌中Co濃度は、どの画分もpH低下区とコントロール区ではほとんど変化がなかった。しかし、葉中Co濃度は、コントロール区(10 μg/g)と比べ、pH低下区(28 μg/g)では有意に高くなった。ポットの土壌のCoの存在量230 mgに対し、葉のCo蓄積増加量が5 μgと非常にわずかであることから、硫酸添加による一時的なpH低下がリョウブのCo吸収に影響を与えたと判断できる。