| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-394 (Poster presentation)

福島県に自生する植物の放射性セシウム集積特性 -事故後2年目の特徴-

*杉浦佑樹,竹中千里,金指努(名大院・生命農),緒方良至(名大院・医),小澤創(福島県林研セ),世良耕一郎(岩手医大・医)

【背景と目的】生態学会第59回大会では2011年に福島県内で採取した草本植物の放射性Csの集積について調べた結果を報告した。2011年はフォールアウトによる大気中からの供給の期間が不確かであり、土壌からの吸収以外の要因が植物体中Cs濃度に影響を与えている可能性があった。また、土壌に降下したCsは時間経過とともに粘土鉱物等に吸着され移動性が低下することが知られている。これらを背景として、2011年と2012年で植物中のCs濃度を比較を行った。

【材料と方法】2011年5月から2012年11月にかけて福島県内に自生する草本(一年生34種、多年生50種)および土壌を採取し、Ge半導体検出器またはNaI(Tl)シンチレーションスペクトロメーターを用いて放射性Csの分析を行った。また、一部の植物試料は硝酸分解後、PIXE法またはICP-MS法により元素分析を行った。

【結果と考察】生活形で分類すると2011年、2012年ともに多年生種でCs濃度が高い傾向が見られた。これは多年生種では事故後のCsの移動性が高い時期に地下茎等の組織にCsが吸収されて成長とともに新たに展開する地上部へ移行したこと、一部の種では既に展開していた地上部にCsが直接付着したことが考えられる。また、翌年は土壌からの吸収に加え、残った組織に存在するCsが地上部へ移行したためであると推察される。全体の傾向として、同一種において2012年では2011年と比較してCs濃度は10~30%程度に減少していた。2011年で高濃度集積個体が見られたドクダミ、セイヨウノコギリソウでは翌年でも濃度は下がるものの比較的高濃度に集積する個体が見られた。しかしながら、これが種特異的なものであるかは生育環境の土性等と併せてさらに検討する必要がある。


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