| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-398 (Poster presentation)

小型チャンバーを用いた草原生態系における土壌呼吸の非破壊的な計測

墨野倉伸彦(早稲田大・教育),吉竹晋平(岐阜大・流圏セ),友常満利,龍村信(早稲田大・院・先進理工)田波健太,小泉博(早稲田大・教育)

草原生態系は陸上の炭素循環において大きな割合を占めており、その炭素収支の詳細な評価は地球規模の炭素循環の動向を解明する上で重要である。草原生態系での土壌呼吸量の推定は一般に刈り取りによって地上部植物体を除去してから密閉法によって行われるが、地上部植物体の除去が根呼吸へ影響を与える可能性や、刈り取りが許されない生態系では使用が難しいといった問題点を含んでいる。本研究では、植物体の隙間に入る小型チャンバーを用いることで土壌表面に直接チャンバーを設置し、刈り取りを行わず非破壊的に草原の土壌呼吸を推定する手法を、技術的な工夫により確立することを目的とする。草原生態系としてシバ草原を用い、シバの地下茎の間に入りかつ測定面積を最大限拡大したチャンバーサイズを検討し、直径3 cmの塩化ビニルパイプ製の小型チャンバーを製作した。このチャンバーでIRGAを用いた通気法による土壌呼吸の測定を行った結果、一般的な草原の土壌呼吸速度の5~10倍程度の大幅な過大評価をする傾向が見られた。これは測定流量の影響で土壌から過剰にCO2が吸い出されたことによると考えられる。これに対し低流量化を中心とするいくつかの改良を施し、露出土壌を用いて改良した手法と密閉法の測定値を比較する実験を行った。結果は依然として流量の増加に伴う土壌呼吸速度の過大評価がみられたものの、最終的に測定流量20 ml min-1以下で密閉法の測定と同程度の値を示す結果が得られた。また、野外での測定を想定し一連の装置を一纏めにした測定システムを製作した。本発表では測定流量の増加に伴う土壌呼吸速度の過大評価の原因と対策、および草原生態系における非破壊的土壌呼吸測定方法の実現可能性について議論する。


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