| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-399 (Poster presentation)

冷温帯ブナ成熟林における土壌呼吸の季節変化

*西村貴皓(筑波大・生物学類),飯村康夫(岐阜大・流圏セ), 井田秀行(信州大・教育),廣田充(筑波大・生命環境系)

炭素吸収源としての機能がないとされる成熟林の炭素収支が,近年注目されている。それは,十分に成熟した森林であっても依然として炭素吸収能力があるという報告が相次いでいるからだ(Luyssaert et al. 2008)。成熟林の炭素吸収能力を解明するには,森林の様々なCO2フラックスを把握する必要があり,特に生態系からのCO2放出量の約半分を占める土壌呼吸の把握が重要である。成熟林における土壌呼吸の空間不均一性は把握されつつあるが,その時間変動はよくわかっていない。そこで本研究は,成熟林の土壌呼吸の時間変動,特に季節変動とその要因解明を主な目的とした。

本調査は長野県志賀高原カヤノ平のブナ(Fagus crenata)成熟林で行なった。この調査地ではブナが優占しギャップ-モザイク構造が顕著である。密閉可能な直径約30 cmの円筒を2011年10月に同林内の固定調査区(100m x 100m)に10 m間隔の格子状に計121個設置し,2012年7月から月1回の頻度で土壌呼吸を測定した。本研究では,多点で同時測定するためにアルカリ吸収法を用いた。同時に,土壌呼吸にとって重要な環境要因である土壌温度,土壌水分量,および土壌有機物量を測定した。さらに,植生の樹冠構造を評価するため,2012年10月下旬に調査区の外周を除いた81地点で魚眼レンズを用いて全天写真を撮影した。

測定の結果,土壌呼吸には明瞭な季節変化が見られ,8月に最大となり(3.64±0.76 gCO2 m-2 d-1)10月に最小(1.61±0.44 gCO2 m-2 d-1)となった。いずれの月も正規分布に近い頻度分布が得られたが,変動係数(CV)は7月が最大で0.34,8月が最小で0.21となった。現在,測定地点毎の時間的な変動特性について解析中である。


日本生態学会