| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-127 (Poster presentation)
北海道南西部に位置する有珠山(標高737 m)北西山麓部において2000年3月31日に始まった噴火は、マグマ活動の終息が2001年5月28日に予知連により確認され、植生回復は2001年に始まったといえる。ここでは、1977-78年に噴火した山頂部の回復と比較しながら2000年噴火後の植生回復の特徴を報告する。両噴火ともに、噴火噴出物の主体は、テフラ(軽石・火山灰)である。調査は、金毘火口群中のK1火口周辺において2001年秋季に方形区法で、2002年以降は、毎年夏季に線状法により行った。植生調査と同時に、微地形(リル)と全自動簡易粒径測定装置によりテフラ粒径を記録した。山頂部における植生変化は方形区法による経年調査をもとに記録している。
2012年までに約100種の維管束植物が記録され、生活型は1年生草本・多年生草本・低木・木本と様々であった。コケの定着は、2003年から記録されたが優占するには至らなかった。コケ期を欠く点は、山頂部と共通である。噴火直後には繁殖に至る一年生草本が多かったが、数年でほぼ消失した。この点は、一年生草本期を欠落する山頂部と異なる。ただし、一年生草本の多くは非在来種であった。噴火直後からオオイタドリ・オオブキなどの多年生草本が優占した。実生は、多くが軽石上またはリル中に見られた。これらの点は、山頂部噴火と共通である。ただし、火口下部ではヨシが優占した。木本植物は、噴火から2008年には最大で樹高3 mに達するドロノキがみられ、森林化は山頂部よりも早い。
以上のことから、(1) 市街地(温泉街)に近接した山麓噴火であるため非在来種の移入が容易であり、種子供給源が種組成の決定に関与している、(2) 噴火規模が山頂噴火より小さいため移入・回復が早い、(3) 実生定着は微地形を利用しなされている、(4) 遷移は耐性モデルでより説明される、ことが明らかとなった。