| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-129 (Poster presentation)
背景と目的)西日本を中心に竹林の拡大による地域固有の種の生物多様性低下が問題視されている。この研究では、放置されたモウソウチク林を周辺広葉樹二次林の構成種による森林へ回復させることを目的として、3つの地域の竹林で間伐または皆伐を行い、跡地での高木性樹木の更新状況を比較した。今回は、伐採後3年間での出現と成長状況を報告する。調査方法)2009年に、3,800~14,600本/haの稈数密度の石川県金沢市内の3地域の放置竹林に、20m×20mのプロットをそれぞれ3つ設け、うち2つを皆伐区と間伐区とした。間伐区では2,500本/haに仕立てた。伐採前に、プロット内に2m×2mの小プロットを16個設定し、植被率や地上1.5mでの散光相対照度を把握したのち、前生稚樹を含め個体識別法によって高木性広葉樹の生存と成長を伐採翌年から2012年まで追跡調査した。結果と考察)広葉樹の大半は伐採翌年に出現する場合が多く、それ以降の新規出現は年とともに減少傾向にあった。ただし、ケヤキなどのように伐採後3年目でも多数発生する場合もみられた。皆伐区では、伐採後1年目に出現したカラスザンショウ・アカメガシワ・ネムノキなどのパイオニア樹種や草本の生育が旺盛であった。また、皆伐区では伐採前から存在していた前生稚樹の成長が旺盛になる場合もあったが、つる類の繁茂が著しく樹木の成長や生存の妨げになっている場合がみられた。一方、間伐区では皆伐区ほど成長は旺盛ではないがサクラ類、アベマキ、クマノミズキなど二次林構成種が多数発生する傾向がみられた。前生稚樹の少ない竹林では、皆伐はパイオニア樹種のほか草本やつる類の優占度を高める可能性が高いことから、広葉樹林を構成する高木樹種を増加させるためには間伐の方が効果的と考えられた。ただし、前生稚樹の多い竹林では皆伐と考えられた。