| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-130 (Poster presentation)

兵庫県におけるナラ類集団枯損後の林分構造と種組成

山瀬敬太郎(兵庫農技総セ)

ナラ類集団枯損後の植生変化は、立地環境や前植生によって異なる。本研究では、枯損後の出現種被度に基づき分類した植分について、出現種数と植被率を比較するとともに、各植分の立地環境との関係を解析した。

兵庫県内で、2010年に集団枯損が発生した広葉樹林において、ナラ類の本数枯損率50%以上の79植分に10m×10mのプロットを設定し、全維管束植物の階層別の被度(%)を記録した。解析は、79植分107種の相対優占度行列を用いて、TWINSPANによる植生タイプの分類を行い、指標種によって区分されたタイプごとに、全種数、各階層の種数及び植被率、常緑及び夏緑植物の植被率を比較した。次に、優占度行列と、79植分の5立地因子(緯度、経度、標高、斜面方位、傾斜)の属性値を用いて、CCAによる序列を行った。また、5立地因子のそれぞれについて、TWINSPANで分類されたタイプ間で多重比較を行った。

タイプは8群(A~H)に分類された。タイプABCDはシカ不嗜好性の種、タイプEFGHは日本海要素の種を指標種とし、タイプABとタイプEFは常緑植物の種、タイプCDとタイプGHは夏緑植物の種を指標種として区分された。シカ不嗜好性種と常緑植物を指標種としたタイプAとタイプBは低標高域に分布し、草本層の種数が有意に少なかった。イワヒメワラビを指標種としたタイプCは低標高域に分布し、草本層及び夏緑植物の植被率が高く、草本層の種数が多かった。タイプEは緩傾斜に分布し、高木層及び草本層の種数が多く、高木層及び亜高木層の植被率が高かった。また、チマキザサを指標種としたタイプGは高標高域に分布し、亜高木層の植被率は低く、草本層の植被率が高かったが、草本層の種数が多い傾向はみられなかった。以上のことから、ナラ類集団枯損後の植生と立地環境に一定の関係がみられたことは、枯損後の植生変化が予測出来る可能性を示唆している。


日本生態学会