| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-131 (Poster presentation)

静岡県南伊豆におけるモウソウチク林の皆伐による広葉樹林化-持続的に再生竹が刈り取られた林分の事例-

近藤晃・加藤徹・伊藤愛(静岡農技研森林研セ)

放任された竹林を皆伐して天然更新等により広葉樹林へ林種転換することにより、竹林の拡大防止や生物多様性の向上が期待される。しかしながら、皆伐後における竹林の管理如何では再生竹の繁茂による林種転換の失敗事例が散見される。そこで、モウソクチク林の皆伐後、再生竹の刈り取りを継続的に行うことがその発生や広葉樹の侵入に及ぼす影響を検証した。

調査地は静岡県南伊豆町地内の放任されたモウソウチク林で、2007年に皆伐され、伐倒した竹稈は全て山腹斜面の等高線方向に棚積みされた。本箇所において、皆伐後4年間、再生した竹稈のサイズと密度、並びに出現した広葉樹の樹種とサイズを記録した。

その結果、再生竹の密度は伐採1年後16千本/ha(平均稈高0.9m)であったが、経年的に減少し4年後には新たな発生は認められなかった。一方、出現した広葉樹の本数密度および種数は、伐採1年後114千本/haと17種/16m2であり、アカメガシワ、カラスザンショウおよびクサギの先駆性樹種3種が全体に占める本数比率は85%であった。その後経年的に種数は増加、先駆性樹種の本数比率は減少し、4年後には前者が27種、後者が25%となった。

竹林の伐採後は生存している地下茎から再生竹が認められるが、1回/年の刈り取りを3年継続することにより再生竹の発生は途絶えた。一方、出現した広葉樹の種数や多様度指数が増大するなど種多様性の向上が認められ、再生竹の持続的な刈り取りは、竹林から広葉樹林へ林種転換する上で有効な順応的管理と考えられる。


日本生態学会