| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-132 (Poster presentation)
ユーカリ植林は一般に萌芽更新を利用した管理が行われており、その成長パターンは、産業植林が行われるような生産性の高い土地では良く研究されている。しかしながら生産性の低い土地、特にユーカリが自然状態では定着できないような乾燥地においては、萌芽の成長に関する情報はほとんど存在しない。そこで、その様な乾燥地域における萌芽の成長パターンを解明するため、西オーストラリアの乾燥地域に植林されたEucalyptus camaldulensis林分において伐採試験を行い、非伐採個体、萌芽更新個体、新規植栽苗の成長を比較した。調査区に植栽した実生苗は、潅水を行わない場合2年以内に全て死亡した。萌芽個体の生存率は100%であったが、その高さ成長は潅水を行った実生苗の半分以下であった。一方、樹冠投影面積の成長には萌芽個体と潅水した実生苗の間に有意差は認められなかった。萌芽個体の地上部バイオマス成長速度(6.0±1.3 kg y-1)と、非伐採木の成長速度(7.8±4.8 kg y-1)の間に有意差は認められなかったが、潅水した苗は(17.7±2.6 kg y-1)有意に高い成長速度を示した。これらの結果は、E. camaldulensisの生存および成長が水の利用可能性によって制限されていることを示唆している。萌芽個体の高い成長速度はよく発達した根系と樹冠面積の急速な拡大の両方によると考えられる。一般に萌芽更新の主な利点は、貯蔵資源の活用による迅速な再生と、発達した根系の利用による高い給水能力の維持と考えられている。我々の結果からは、乾燥した土地においては、後者がより重要であることが示唆された。