| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-138 (Poster presentation)
富士山の南東斜面では、火山噴火後の一時遷移系列に沿って特徴的な島状群落(パッチ状の植生群落)の発達を見ることができる。著者らはこれまでの研究で、このような一時遷移に伴う土壌微生物群集の量的・質的な発達プロセスを明らかにした。また、基質(炭素源や窒素源)の量や質による違いが微生物群集の呼吸活性に影響していることを示した。本研究では、基質添加実験を通して、基質の量的・質的な違いが微生物群集のバイオマスや群集構造にどのような影響しているかを明らかにすることを目的とした。
富士山南東斜面の島状群落間の裸地(遷移初期)およびそのエリアに隣接するカラマツ林(遷移後期)から鉱質土層を採取した。実験室内で3種の炭素源(グルコース・セルロース・リグニン)と窒素源(硝酸アンモニウム)および窒素源(リン酸二水素カリウム)を単独あるいは混合して土壌に添加した。添加後0, 5, 15日後の土壌に対してリン脂質脂肪酸分析を行い、土壌微生物群集のバイオマス及び群集構造の変化を明らかにした。
炭素源としてグルコースを用いた場合、遷移後期土壌においては炭素源のみの添加でもバイオマスがやや増加する傾向が見られたが、遷移初期土壌においては、炭素源と窒素源と同時に添加することで微生物バイオマスが増加した。このことから、遷移初期においては炭素源と窒素源が同時に不足していることが微生物バイオマスの重要な制限要因の1つであることが示された。また、いずれの土壌においても、炭素源としてセルロースまたはリグニンを用いた場合のバイオマス増加量は、炭素源としてグルコースを用いた場合と比べると概して小さかったことから、炭素源の中でも易分解性炭素源が不足していると考えられた。